コミュニケーション記事 2014-06-13
108 「坂道の思い出」
小さいころ
よく父の自転車の後ろに乗って
婆ちゃんの家から
帰っていた。
自転車から落ちないように
父のお腹に手を回し
ズボンのベルトをしっかりと
握っていた手の感触が
今でも残っている。
それでも心配で
身体をピッタリと
くっつけていた頬に
父の背中の感触が
今でも残っている。
自転車をこいでいる父が突然
「あっ、今日は野球放送が有ってる。
急ごう!!!始まってる」
当時はまだラジオの時代。
「お父さん」
「何」
「ラジオのスイッチは切ってきた?」
「切ってるよ」
「それだったら、帰ってから
スイッチを入れたら
初めから聞かれるよ」
「ハッハッハッ」
父は、大笑いしたのを
今でもはっきりと覚えている!!
ただ、その時は、
どうして父が笑ったのかは
理解出来なかった。
それ以来、折に触れ
「圭二が、あの時・・・」
自転車の出来事を
楽しそうに父が語っていた。
どうして父が笑ったのかは
勿論、年と共に理解できた。
何十年かぶりに
その時の道を
車で通った。
その当時住んでいた家の前には
坂があった。
子供心にその坂は急な坂だった。
父は、その坂を自転車で上る時に
何かを言っていた。
「よいしょ・よいしょ!!
坂はきついなぁ!!」
子供心に
自転車の後ろに
自分が乗っているから
きついんだろうな・・・。
そう思った記憶が
微かにある。
だから、その坂は
急な坂だと思っていた。
えっ、坂がない!!!
確かにこの道なのに
坂がない!!
道路わきに車を止めた。
多少景色は変わったが
この道に間違いはない。
このほんの僅かな坂道が
子供の心には急な坂道に
感じられた。
何故か涙が出た。
父と母と三人で暮らした
社宅の長屋後には
洒落たアパートが建っていた。
まだ、土間だった。
夕方になると長屋の煙突から
煙が上るのを昨日のように思い出せる。
僅かな坂道で
僅かな記憶を
久しぶりに
思い出したら
また涙が出てきた!!
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